緑園の丘 2005年夏号 vol.56
緑園の丘 2005年夏号 vol.56

“あなたの右の手を握る神” 〜カミもホトケもない場面で〜

 お元気でしょうか。森の木立、夜明けの海、入道雲・・・遠い時代の夏のサウンドがラジオから流れる...夏なのでうしろを振り返ることがあり、夏なので前に向かうことがあります。 夏の日差しを浴びていると、「人間がこんなに哀しいのに主よ、海があまりに碧いのです」という『沈黙』の作者の言葉がふと心に思い出されてきますあなたのたましいが今日も安らかでありますように。
横浜緑園キリスト教会主任牧師 原 田 憲 夫

 


時計の針を合わせる男

 毎朝、時計店の前に立ち止まって自分の時計の針を合わせる男がいた。かなりの歳月が経ってから、ある日店の主人はこのことが気になってこの男に聞いた。 「なぜいつもここに立ち止まって時計を合わせているのですか。」その男は答えた。「実は、私の大事な仕事の一つは、工場のサイレンを鳴らすことなのです。私はそのサイレンをこの店の時計に合わせて鳴らしているのです。」すると時計屋の主人は驚いて叫んだ。「なんと言うことだ。私は何年間も、この店の時計をあなたの鳴らすサイレンの音に合わせてきたというのに。」 あなたにはそれまで自分がずっと依り頼んできたものが足下から崩れるという経験はなかったですか。
ラター

 16世紀は大航海時代と呼ばれるように、ヨーロッパ諸国が資源や貿易の拡大をはかって新世界へ東奔西走する時代でした。マゼランのように新世界への航路を開いた人々は国民的英雄となりました。しかし反面、航海は多くの人々の命を奪いました。そこからかろうじて生き延びて戻ってきた人々は航路の秘密を小さな書物に記録しました。それらは基本的に「水先案内人」が航海の記録を詳細に記録した書物なので、安全にその進路を辿って戻ることができます。舵手が目的地に行き着いた方法、故国に戻った方法、航路で遭遇したもの、危険な浅瀬の位置、岬、海峡の深さ、安全な港の位置などが詳しく記され、当時それは値がつけられないほど高価なものでした。この記録本が「ラター」と呼ばれるものです。  私たちの人生航路にもこの「ラター」が必要です。しかし実際に私たちが手にする手がかりは、毎朝時計の針を合わせる男のようなものです。自分がずっと依り頼んでいるものが、実は不確かなものであることを知らないのです。 占い(占い師)や高価な御利益のあるという品々はますます賑やかです。先行きが読めない不安な時代だからこそ、この種のラターにすがりたいのです。だからあちこちで小さなカミガミが誕生します。私たちの心が何とか助けてほしいと必死に叫んでいるからです。けれども肝心な時になると決まって「自分の手で/自分の意思で/自力で」頑張れと、カミガミ(贋のラター)からそっぽを向かれるのです。
あなたの右の手を堅く握る神
 私たちの友人に、自分の葬儀を考えながら教会に来た人がいます。その友人は重い病気を宣告され、何とか光を見いだそうと八方手を尽くし、必死に助けを求めました。けれどもどの扉をたたいても最後は「自分の手で/自力で」救いに達しなければなりませんでした。ついに、ひとが一番奥深いたましいの底からうめく「カミもホトケもない」場面に投げ出され、そこで友人は自分の終着点(死に場所)を求めに教会へ重い足を運んだのです。  しかしそのとき、キリストに向かって叫ぶひとりの赤裸々な男の姿が見えました。 「私を憐れんでください!...私を憐れんでください!」 友人はその叫びに自分の叫びを重ねました。「私を憐れんでください!」これこそ「真のラター」です。 キリストの与える救いは私たちが「自分の手で/自分の意思で/自力で」達成するものではありません。キリストの憐れみの心であり、一方的に与えられる恵みによるものなのです。  
あなたの神、主であるわたしが、あなたの右の手を堅く握り、「恐れるな。わたしがあなたを助ける」と言っている....(聖書)  「右の手」とは、圧倒的な力、勝利を表します。「カミもホトケもない」場面で、キリストはあなたの右の手を堅く握り、「恐れるな。わたしがあなたを助ける。」と言われるのです。 高熱がさがらないで不安な子供の手をしっかり握る母親....余命幾許もない父親の衰えた手を握る50過ぎの息子。人と人との間でも手を握ることで心が通じ合うことがあります。それは強い絆を確信させます。  「カミもホトケもない」土壇場で、キリストはあなたの右の手を堅く握り、沈んでいくあなたを引き上げてくださいます。あなたの上に神の祝福が豊かにがありますように!(Ha)  
 


 

 

 

 

      

 


ホームに戻る 緑園の丘に戻る


Copyright (C) 2002- YRCC. All Rights Reserved.
This page is created by Gmack.